つまり、だ。
それは今、彼らは何も持っていない空っぽであることを意味する。
地位も、名誉も、財産も、家も、戸籍も一一名も。
ルイ・ヒューアスは存在しないものであり、エルナリーゼ・ヒューアスはただの国崎メイとなっている。
そう、“足枷がない状態”なのである。
「リルちゃん、それって……」
『ふふ、これからがあなた達の幸福の時間です。
今のあなたたちは赤の他人――思う存分、愛し合って結構ですよ』
ふたりは顔を見合わせ、目を丸くした。
互いがずっと思い悩んでいたことが、ひとりの少女の少しの計らいで霧散したのだ。
「…なんというか、あの、びっくりですね……」
「ああ……突然のことでどうしたらいいのかわからないというのが現状なんだが、」
困ったような笑いから、満面の笑みに変わって。
ルイはメイの頭を己の胸に抱き寄せると、力強く抱きしめた。
「……よかった、ようやくこれで、メイを大好きな女の子として抱きしめられる……!」
「はわ、ご主人さま……」
大好きな女の子、など言われて、真っ赤になりながらも――メイも笑った。
「メイも、ご主人さまに大好きってずっと言えます、嬉しいです……!」
8年間である。
長い長い不幸を乗り越えて、ようやくふたりは幸せを手に入れた。
『まあまあ、私ったら居ないのにおじゃまかしら。そっと通話切ってもバレないかしら……』
異国のお姫様がしかめっ面をしているなか、2人は固く固く抱きしめあった一一。
それは今、彼らは何も持っていない空っぽであることを意味する。
地位も、名誉も、財産も、家も、戸籍も一一名も。
ルイ・ヒューアスは存在しないものであり、エルナリーゼ・ヒューアスはただの国崎メイとなっている。
そう、“足枷がない状態”なのである。
「リルちゃん、それって……」
『ふふ、これからがあなた達の幸福の時間です。
今のあなたたちは赤の他人――思う存分、愛し合って結構ですよ』
ふたりは顔を見合わせ、目を丸くした。
互いがずっと思い悩んでいたことが、ひとりの少女の少しの計らいで霧散したのだ。
「…なんというか、あの、びっくりですね……」
「ああ……突然のことでどうしたらいいのかわからないというのが現状なんだが、」
困ったような笑いから、満面の笑みに変わって。
ルイはメイの頭を己の胸に抱き寄せると、力強く抱きしめた。
「……よかった、ようやくこれで、メイを大好きな女の子として抱きしめられる……!」
「はわ、ご主人さま……」
大好きな女の子、など言われて、真っ赤になりながらも――メイも笑った。
「メイも、ご主人さまに大好きってずっと言えます、嬉しいです……!」
8年間である。
長い長い不幸を乗り越えて、ようやくふたりは幸せを手に入れた。
『まあまあ、私ったら居ないのにおじゃまかしら。そっと通話切ってもバレないかしら……』
異国のお姫様がしかめっ面をしているなか、2人は固く固く抱きしめあった一一。