ビクッとしたふたりが見えているかのように、くすりと笑った彼女は――やはり、台本を読むかのように話し始める。
『もういいでしょう、あなたたちは充分後悔し、傷ついた。8年間、おつかれさまでした。
私のモットーは不幸の人は幸せに――不幸の時間は終わりです』
「なにを……」
ルイがリルに問いかけようとしたその時だった。
『ルイ・ヒューアスさん、あなたは“罪人の子”として、戸籍から何まですべて抹消します。
当然、ご兄弟であるメイちゃんも』
「……え?」
ルイが呆然とする中、リルは嬉しそうに語った。
『カサンデュールの最大の刑は死刑の上の存在の抹消。
私を殺そうとしたルコーラ・ヒューアスが生涯をつくして行ってきたすべての行為を無とすること。
というわけで――あなたがたルコーラのご子息ご息女は、戸籍ごと存在しないことになります』
子供、子孫を成す行為は、その人の生涯の財産といえるものである。
大罪人の刑はそれらすべてをなくすこと、通常は末代までの死刑が主なのだが、リルの計らいでそれはない。
ルコーラ同様、すべてを一度なくすことでのがれている――