「…僕は……取り敢えず、メイの現状を話しました」


『偉いですね、あんなに嫌がってたのに。言ったでしょ、いつかは言わなくてはならないんだって。言ってどうなりました?』


「……どうもしませんよ。メイが家出する前と何ら変わりません」


『当然、あなたの想いも伝えたのでしょう?本当に変わらないんですか?』


「え、ええ……伝えたところで電話が来たので」



『まあ……私、てっきり二人で駆け落ちしようとか馬鹿なこと言ってるんじゃないかなって思ってましたのに』


何を言ってるんだと頭を抱えるルイを見て、メイは確信した。

ルイもまた、思い悩んでいたところをリルに押されたのだ。

だから覚悟もしていたし、あんなに流暢に話せた。

リルはこうなることを予想していたのだ。

底知れない少女である。


『さて、メイちゃん。あなたも言いました?すべてを理解できました?』


「……はい。メイ、ご主人さまがどれだけ辛かったかわかったです」


その言葉にギョッとしたのはルイだった。


「メイ、怖かったんです。ご主人さまのこと好きになるの、すっごく。野崎さんがダメって言ったのもあるし、メイばっちいし、何も無いし。こんなのが、好きになっていいはずない」


「メイ、それはちがう」


「ちがくないです。だから抑え込もうとして……ご主人さまはそれをずっとずっと続けてきたんですね、何も知らなくてごめんなさい」


うつむいて、悲しそうに話す彼女。

ルイはかける言葉もなく、どうしようとさまよった。


「謝らないでくれ。……兄弟だって言っていれば良かったんだ、最初から」



『あー、もう、面倒ですねぇあなたたち』


部外者になっていたリルが、比較的低い声でそう言った。