「……8年前、ルコーラはお前を母の身代わりとして拾った。
その時彼は、お前を本当の家族にしたんだ」
メイの腕から抜け出して、彼は呆然と座り込むメイと向き合う。
逃がしてくれないなら、逃げずに言おう。
覚悟を決めて、ルイは今までの生活を捨てることにした。
「……エルナリーゼ・ヒューアス、君は僕の愛しい愛しい妹だ」
言い終わるやいなや、顎をそっと掴んで、メイの唇と己のそれをそっと合わせる。
ようやく合わさった唇は、涙の味がした。
「……ご主人さま、あの、」
「ごめんね、今まで黙っていて。…好きって言ってくれて、本当に嬉しかった」
涙をぬぐいもせず、儚く笑った。
その笑みで、メイはすべてを理解した。
我慢していたのは彼の方だったのだ。
兄弟なのに愛してしまった、言えるはずのない想いをずっとずっと溜めていた。
必死に押し殺していたところに、メイが感情を吐露したから一一なんとかうやむやにしようとしたんだ。
理解したからといって、どうしたらいいのかわかるはずもなく。
部屋の中で2人、抱え込んだ感情を宙ぶらりんにするほかなかった。
彼は立ち上がって扉を開こうと手を伸ばし一一
ズボンのポケットから、雰囲気を台無しにする着信音が鳴り響いた。