「よかった……無事で!本当に、よかっ……」


驚いて彼を見れば、彼は震えていた。

ぎょっとするメイの視界に、さらなる衝撃が。


西が不審者と勘違いしたのか、彼めがけてかかと落としをプレゼントしようとしているのだ。


それをさっと止めた瑠璃は、唇に指を当てて「しーっ」と示す。


「心配したんだぞっ!お前がいなくなって…どれだけ僕は焦ったか!僕だけじゃない、野崎も高遠もだ。メイは世間を知らさせずに育ててしまった。だから何があってもおかしくないって思ってな。ああいや、こんなことを言いたいんじゃない、僕は……」


「あの、ご、主人様……ごめんなさい……」


お得意の長文説教。終わらせようと思って声を出せば、メイは涙声だった。


「メイ…?」


「あう、なんで涙が……あれ、」


ルイが体を離してメイを見れば、しきりに涙をぬぐう。


ぼろぼろこぼれる涙を止めることは出来ないようで、しゃくりあげて声をあげた。


「メイ、ご主人様、ごめんなさいっ……ほんと、心配かけて、黙って、それでっ」


そっと頭が手のひらに包まれる。


撫でられているのだ。

暖かいそれに、余計に涙が止まらなくなる。

何を伝えればいいのかわからない。


久しぶりにあった彼はやつれているように見える。

どこか顔色も悪いし、少し痩せた。

忙しかったのだ。


会わなかった自分に嫌気が指す。


バカみたいに避けて、この感情を怖がって。


(ごめんなさい、ご主人さま)


泣きながら、心のなかで必死に謝る。

何を思ったらいいのかわからないから、ただ必死に謝った。