『今私に言ったことを全部ルイさんに伝えてください』
「え!?で、でも野崎さんが」
『状況がかわりました。だいじょうぶです、あなたはもう自由です』
「じ、自由……?」
『あなたはもう誰のものでもありません、あなたはあなたがしたいように生きて。
ルイさんを捨ててお兄さんのところに行くのもありです。
ただ、どちらにしろ挨拶だけはして下さいね』
「あの、いったいどういうことです?」
意味がわからない。
自由って言われても、と戸惑う。
『リルちゃん、私はあなたの足枷を全部取っただけですよ』
ふふふ、と嬉しそうに笑う。
意味がわからない、と首をひねっていると、『ああもう時間ですね』と声が聞こえた。
『律儀なあの人ですから、きっともう……』
ピンポーン、と、高らかにインターフォンがなる。
東が西を連れて玄関へ向かい、応対した。
「はい、どちらさまで…え?あっ、ちょっと!」
「すまない、少し急ぐんだ」
無理やり押し入ったのかドタバタといくつもの足音がひびいて、ガチャりとドアが開く。
不審者か、と身構えた瑠璃。
メイは、思わず受話器を落とした。
どうしたらいいのかわからなかったのだ。
「っ、メイっ……!」
駆け寄ってきた彼は、メイの小さな体躯を抱きしめる。
その胸いっぱいに、二度と離さないというように。