ルイはその国の王族だ。

カサンデュールの女王候補リル・ドリュール女王には、年の離れた姉がいる。

彼はその姉が嫁いだ男の弟だ。

厳密には王の血が流れてる訳ではないが、家族をひとくくりにして王族と称するカサンデュールでは、ルイは王族に含まれる。

「カサンデュールは国家機密です。易々と話してはなりません!」

生真面目な野崎が怒り狂うも、まだ笑いながら軽く返すルイ。

「ググろうが何をしようが、カサンデュールなどという国名は出ない。
せいぜい出るのは信仰するタラック教だろう。
ビビらせたかったのだ、ただ単にあの女を。

それに嘘は言ってないだろう?」

「ですが、子供じみた理由で社長は…」

「子供じみていようが、俺はメイを守りたいんだ」


青い瞳が、冷たく輝く。


「野崎にはわからないだろう、傷つけられ続けたメイを守りたいという気持ちが」

痛いほど野崎はわかっていた。

ルイがいつもメイをどれだけ思っているか。

家族愛と親心をひっくるめた、身分違いの恋愛感情――


「わかりませんよ…もう」


なぜだかため息をつきたくなって、イラついた。

彼を見てるとむしゃくしゃするのだ。


「あなたは何をしたいんですが!メイさんはあなたのではないんです、バカらしいにも程があります!」


そう叫んで、野崎は社長室を飛び出した。

「……あなたのではない…わかってるさ」

そのルイの消えそうな呟きを聞かずに。