「……野崎、メイは」
「今日も元気です。ああ、昨日お兄ちゃんの夢を見たんですーとか言ってました」
「……………………そ、そうか」
嫉妬で一瞬声が出なかった。
無理やり出した声も震えていたし、恥ずかしかった。
「ところで野崎、何か用があるのではないのか?」
「そうでした。二つほどあります」
思い出したようにくるりと背を向けて、なにやらワゴンを持ってきた。
人ひとりはいるくらいの大きなダンボールを乗っけて、よたよたと危なっかしく揺れる。
「……なんだそれは」
「カサンデュールからのお届けものです。たぶん、業者が処分しきれないと判断したものではないでしょうか」
「ああ、そういえば僕のものを届けておくとメールがあったな。そこにおいて置いてくれ、あとで目を……」
通しておくと言って、カチャンッと目の前に荒々しい音が響いた。
ガラステーブルにコーヒーカップが置かれたのだ。
女らしさのおの字もない、とても荒い置き方だった。
「……今、通してください」
「野崎」
「ブルーライトは長時間浴びると目によくありません。少しパソコン画面から目を離されてはいかがでしょうか」
休め、と。そう言いたいのだ。
野崎は体を自重しないルイに怒っていた。
だからコーヒーとともに荷物を持ってきたのだ。
「……野崎、僕が本当に休まるのは、メイが隣にいる時だ」
「……」
無表情で野崎はルイを見つめた。