メイは、あれから見事にルイを避けて避けて避け続けていた。
部屋に入っても抱きついてくれない、触れれば遠くに逃げていく。
会話もしどろもどろで、どこか上の空だし、目すら合わせてくれない。
正直ここまで避けられることは初めてだったので、呆然としたし、死ぬかと思っていた。
いや、実際ルイは死んでいた。
「……社長、大丈夫ですか?」
気が付くと野崎が目の前にいて、ドキリと心臓が跳ねた。
「いつから、」
「ノックしても気づかないのですから、勝手に入りました。申し訳ございません」
丁寧にあたまを下げられ、ルイはくしゃりと己の髪を握りしめた。
「……悪い、少し疲れていて」
何日も会社に缶詰であるから、心の休まる時がない。
「少しお休みになっては?」
「いや、ルコーラが死んでからこの作業をしては、風評被害が出る。貿易会社に損失を出しては兄上が苦労するからな」
「……真っ青ですよ、顔色」
「ああ、少し伝達ミスがあってな。寝てないんだ」
「社長……」
あきれている野崎を無視して、ルイはパソコンに向かう。
こういう時こそメイが欲しいのだが、メイはルイを徹底して避ける。
辛いことこの上ない。
かくなるうえは、野崎を介してメイを摂取するしかないのだ。