「……メイちゃん、それは辛くないですか?」
「え、」
「あなたは優しすぎます。幼稚園での道徳教育が正しいとは限りません。死ね、と言ってみて。恨まないと辛いことだってあるのですよ」
ピクリとティンが反応し、黙ってリルを見つめた。
たぶん、彼女はそれで救われた。
両親を殺された悲しみを、殺したいほどの憎悪で覆い隠した。
だから彼女は生き延びて、復讐を果たせるほどの力と成長を身につけた。
つまり、体験談。
自分のことを踏まえて言うそれには、薄っぺらな机上の言葉よりも真実味が生まれた。
だから。
「辛い、です」
「はい」
「嫌です、悪いです一一死んじゃえって、思います」
「はい」
「うぅ、しんじゃ、え……」
ぼろぼろと、涙が伝う。
救われたかと思いきや、メイは悲しそうな顔をした。
「……だめです、メイ、死んじゃえって言うと、心がぎゅってなります。すごくいけない事言ってる気がします…リルちゃん、ごめんなさい。むいてないかもです」
「メイちゃんらしいですね。人には向き不向きがありますから、無理しなくていいですよ」
その方法で生き延びたリルを知っているティンは、肩を撫でるリルを複雑な思いで見つめた。