「なぜ?

実はね、今日メイが倒れたと連絡があったんだ」



「た、倒れたって、」


予測してなかった緊急事態に、驚く。

メイ大好きな彼があまりに平然としていたから、そんな緊急事態だとは思わなかったのだ。



「心配してくれるのか?」


青い瞳がニヒルに笑う。

「あ、あ…その。社長があまりにも平然としてらっしゃるので…」

「野崎、僕は怒りに燃えているよ?」


さらりと、金髪をなびかせて言うものだから。

野崎の肩はびくりと恐怖に固まる。



「あの子はね、トラウマがあるのだよ。

暴力沙汰に巻き込まれると、過呼吸を起こし、パニック状態に陥る。

そう、彼女は暴力沙汰にあったんだよ。
他ならぬ家庭教師に」



「なっ…」


家庭教師が生徒に暴力沙汰など、犯罪ではないか。

それは怒るはずだ、と野崎はどこか納得した。