「……メイさん、しばらく私といましょうか」
「本当ですかっ」
「そのかわり、条件があります」
「じ、条件?」
「……社長に思いを伝えないでください」
「っ、」
ごめんなさい、ごめんなさいと謝りながら発した言葉だった。
思いを伝えなければ、きっとふたりは今まで通りに一一時間はかかるだろうけれど、戻れるはずだ。
そのためには今まで通りのふりをしなくてはならない。
「……本当にごめんなさい。色々あるんです」
「あの、野崎さんは、ご、ご主人さまのこと好きなんですか?」
「ぶっ……ち、違いますっ!」
思わず吹いてしまった。
「……社長は尊敬できる上司です。多分好感度はあなたの方が私の中では上です」
「こーかんど?」
「忘れてください。…とにかく、私は社長なんか好きじゃないです」
「そ、そうですか……」
もじもじと恥ずかしそうに野崎を見つめた。
好きだとカミングアウトしたことに照れるのか。
なんだか急に乙女になった気がする。