「メイさん…」


「あ、野崎さん…!」


涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げて、認識してくれた。

どうするべきか悩んでいると。


「ぁああああっ……!」


布団から抜け出して、裸のまま野崎に駆け寄ってきた。

そして抱きつかれる。

声を上げて泣き始めた。


「……め、メイさ……」



記憶が消えてるという話ではなかったか。


疑問に思いながらメイを観察する。

「うえ、え、どうし、よ。め、メイ……」

その言葉で確信した。


メイは退化したときの記憶が消えていない。


覚えてて、だから泣いてるのだ。

震えながら泣きじゃくる彼女に、恐る恐る触れる。

白い肩には、赤い跡で埋め尽くされていた。


「っ、」


酷い、酷すぎる。

そのままメイを抱きしめた。

「辛かったですね……もう大丈夫ですから……」


一一小さい思った。


その肩や、存在が。


「とりあえず、お風呂に入りましょうか。あ、私も一緒に入って……」


「野崎さんっ……」


すがるような目で見られた。


「助けて、消えない……!消えないんです……!」


ボロボロと涙を流す。


「メイ……覚えてるの……!忘れたいのに!」


「落ち着いて下さい!」


ひっひっ、と過呼吸気味になってきたので、急いで話を止めた。


これ以上はいけない。


「……メイさん、必ず話は聞きます。だから、今はお風呂に入りましょうか」


「あう……」

「風邪をひいたら大変です」

「……うう…」


「…あなたが大好きだから心配してるんです、ほら、行きましょう」


笑ってくれると、思った。

そう言えば、好きを与えれば笑うと信じてた。

けれど、彼女はまだ絶望した顔のままだ。


「…………」



どうしようもなく、胸が傷んだ。