全くこの事態を想定しなかったわけではない。



だが、まさかとは思っていた。


まだメイは子供だ。

いや、ルコーラにとっては戸籍上も子供ではある。

道徳的に、愛でるだけだと思っていたのに。


まさか、手を出すとは。



悔しくて、殺したくなる。



でも今することは、メイを戻すことだ。


戻せば、退化していた時の記憶は消える。

退化したのが行為後とかではない限り、辛いことを思い出さずに過ごせる。


そう、自分さえ飲み込めば、元に戻れるのだ。



「……すまない野崎、向こうにいっててくれないか?」


「え?」

「……たのむ」

苦しそうな顔で言われたので、そっと下がった。


下がったことを確認して、布団ごとメイを抱き寄せる。


相変わらず震えている。


構わず頭を包むように撫でた。



「メイ…辛かったな……っ」


遅かった?

いや、遅いも早いもない。

こうなることは、決まってたのだ。


「こんな思いをさせてすまない……」


メイがメイじゃなかったら。

普通の女の子だったら。

こんな思いをせずに、普通に高校に通っていたのかもしれない。



「……それでも僕は、」


きっとメイを欲しただろう。


全てをなげうってでも欲して、羨望したと思う。

だってこんなにも愛してるメイがいないなんて、考えられない。

メイと出会わなかった人生なんて、想像つかない。


叶わない想いでも、それでも僕は幸せなんだ一一。



その言葉を飲み込んでメイを見れば、まだ震えている。

おかしいと思って顔を覗きこもうとして一一向こうを向かれた。



戻ってない?

いや、頭はきちんと……。


「……ごしゅ、じんさま……」


その声に安堵した。

知らない人ではない、メイは戻ってる。