数分後、ルイは椅子を手にしていた


客間のお客様用の高級椅子。


刃物を探したが、鍵を切れるようなものはなかったからである。


「いちにのさんでいくぞ、野崎頼む」

「わかりました一一いち、にの、さんっ」

「うおおおおおっ」


野崎の声と同時に走り出す。



その勢いのまま椅子を扉に叩きつけ一一破壊音が響いた。



あまりの音に耳と目を塞ぎ、しばらくして目を開けた。



扉の真ん中に大きな穴があいていた。


ルイは肩で息をして、一呼吸置いて。

空いた穴から中に踏み込んだ。


「メイっ」

薄暗い部屋、その中でベッドが盛り上がっている。

急いで駆けつけて、布団をまくった。



「…………め、い?」



中には、確かにメイがいた。

ずっとずっと待ち望んでいた存在。

頭を抱えて怯えてるのは予想通りだったが、他が予想外だった。



思わず力が抜けそうになる。


魂が落ちそうになりながら、また布団をかけた。


「……うそ、だろ…」


絶望。

いや、怒りか。



「あの野郎……」


どうするべきだ。


自分は一体、どうやってこの状況を飲み込むべきか。


唇をいたいほど噛んで、とうとう血が出た。


「社長っ!メイさんは……」


「野崎」



穴から野崎が入ってきた。

そして、ルイの顔を見て、何かが起きたことがわかった。


「社長……?」

「………」





一一中のメイは、裸だった。