◇◇◇


深夜に、高遠が待ち望んだ相手がやってきた。

どこかやつれた彼は、野崎とともに帰宅した。


「ルイさま、おかえりなさいませ」

「ああ…夕飯は食べてきたからいい」


足早に廊下を進む彼を、急いで引き止めた。

「あのっ……!」

ぱたりととまって、振り向いた。


「なんだ?」


周りの使用人が不思議そうに高遠を見ている。

この人たちにメイのことを聞かれるのは良くないと、濁すことにした。


「……ルイさまの大切なものについて、お話がございます」

「っ、え?」

「……大切なものって……」



野崎も目を丸くして、高遠を見た。

「……聞こう、僕の部屋でいいかい?」

「はい」

メイのことについてだと、一瞬でわかってくれた。

さすがだ。



部屋に案内されて、テーブルに座るようにすすめられた。

近くで見ると、やはりルイの顔色がよくない。

心中が穏やかなはずないのだ。


「……で、メイのことなんだろう?」

疲れたように机にもたれる。

後ろで控えてる野崎も、心なしかやつれていた。


「はい。メイ様が連れ去られたのはご存知ですか?」


「な、なんでそれを……」

野崎が驚いて、つい口を挟む。

「……もちろんだ」



「…現在メイ様はこのお屋敷にいらっしゃると思われます」



「一一本当か!?」

ガタンと立ち上がる。


びっくりしていると、おずおずと戻った。