あたたかい涙が止まらなくて、拭っても拭っても涙が止まらない。


ぼろぼろと落ちた涙は、ベッドを濡らす。

急に目の前の男が嫌になり、気持ち悪くなり、メイは必死に抗った。



一一触れられたくない。


触れられたいのは、彼だ。



「エルっ」

「エル……」



彼はなんといっていたか。

ああそうだ、メイって。
優しい声でメイと、そう呼んでくれた。


エルナリーゼに、なりたくない。


彼か呼んでくれた名前を失いたくない。


「メイは、メイですっ!」

「お前はエルナリーゼだっ!それ以外は認めない!」

「違います、彼はメイって呼んでくれて!」

「エルナリーゼ!」

「やだっ!は、離してくださいです!」


いきなり変わった目の前の女に、ルコーラはいらついていた。

従順なのが取り柄だったのに、なぜこうも抗う。

もう少しでものになる所だったのに、と歯がゆく感じた。

このまま離すのは嫌だった。

ようやく手にした彼女だ、物にしないことには引き下がれない。


もがく彼女を強引にベッドに縫い付け、押し付けるように叫んだ。


「お前は私のエルナリーゼだっ!
国崎メイなどではない!」


ようやく、手にしたエルナリーゼ。

二度目の彼女も自分を否定するのか。


悔しくて、いらついて。


「あまりに言うことを聞かないなら一一捨てる!」


禁句を、言い放つ。

「……え」

「言うことを聞かないお前など、必要ない!無価値だ!」

「……っ…」

悲しそうに顔を歪ませる。

そのまま黙ったので、息をはいた。


「……ようやく大人しくなったか」

「ごめんなさい……メイ、悪い子で…」

「……分かればいい」


おどおどと顔色を伺ってくる。


一一そうだ、この反応だ。


この従順さが心地よい。


にやりとルコーラはほくそ笑んだ。