「何を言ってるんだ?エル、お前は」
「違うの、違う……ルコーラさまじゃないのっ……!」
頭を抱えて、なにかに戸惑うように叫ぶ。
「何が違うっ」
「メイ……嫌だ…違う、なりたいのは、ルコーラ様のじゃ……!」
メイの頭には、知らない男の人が浮かんでいた。
この目の前の男に似た金髪をしていて、でも全く違う笑い方をする。
彼は幸せそうな顔でメイの頭を撫でていた。
すごく、幸せだと感じていた。
その手が心地よくて、笑みが心に染み渡る。
ソファの上で自分たちは、恋愛映画をみていた。
撫でられながら思うのだ、ああ自分もいつか一一
いつか、彼とこんなふうに過ごしてみたいなと。
想像するだけで恥ずかしいけど、手を繋いでキスをして、そして一緒に笑いあって。
誰だろう、この男の人は。
けど、幸せだ。
そして自分はとても彼が好きだ。
「……あ……」
『必ず迎えに行くから』
そう言ってくれていた彼の声が、すごく嬉しかった。
この人が話す一言一句すべてに愛されてるのを感じていて、嬉しかった。
「う、あ……」
思い出せない。
思い出せないけれど。
「なん、で……」
なぜ、涙があふれるのか。