「10年前、私はたまたま道端で倒れてるティンを拾ったんです。
高熱が出てて、でも家に入れなかったようで。
家に寝かせてたときに、家に覆面の男が数人入ってきました。
ルコーラが雇った男達で、手際よくお父様とお母様を殺し、私を拉致しようとしました。
たまたま起きてきたティンもそれに巻き込まれて、外の車に詰め込まれそうになったとき。あなたの母親エルナリーゼさんが買い物袋をぶら下げて帰ってきて、撃退してくれました。
近所で普通に暮らしてる風を装ってたほかの護衛も、そのときに異常に気づいたようで、その場で覆面たちを血の海に。そのまま急いで国に帰りました」
矢継ぎ早にそう話し、ルイを見つめた。
淡々と語るリルに、ルイは驚愕した。
恐怖やトラウマなどを微塵も感じさせない。
まるで用意された原稿を読んでるかのようだ。
「以上です。大したお話でもないでしょう?」
「大したお話でもないって……やけに話なれてますね」
「そりゃあ、何があったのかってさんざん聞かれましたからね」
心配そうに見ていたティンの頭をさっと撫でて。
ぱんっと手を叩いた。
「さて、あなたがたは早く帰ってメイちゃんを見つけてあげてください。
あ、野崎さんはそれお願いします」
本当に邪魔で仕方ないようだ。