「リル様っ」
「あら、ティンはプロですのよ。きちんとそういう教育を受けてますし、ボディーガードとしてならそこら辺の大人よりも数段格上です」
そのことばに、ついティンを見る。
相変わらず童顔で、男らしさの欠片もない。
どちらかといえばメイド服とか着せた方が似合いそうな顔をしていると野崎が前に言っていたが、そのとおりだった。
「リル様、それはさすがに買いかぶりすぎなのでは…」
「むぅ…。では二人だけ、入口の前にでも置いてもらいましょうか。無駄だと思うのですけど」
不服というように頬を膨らませて、妥協した。
二人だけ、彼女の予想の人物と並ぶ程度。
本当の本当に妥協なのだろう。
「…わかりました、野崎」
「はい、手配しておきます」
後ろでこくこく頷いた。
「……では、僕は何をすれば良いでしょうか」
「ルイさんはいつもどおり、メイちゃんのことなど気にしてない体でルコーラさんと接してください」
「リル様……!」
「彼は私の獲物です。メイちゃんのこともあるでしょうが、お願いします、彼に
引導を渡すのは私でありたい」
その言葉に息を飲んだ。
そうだ、彼女は目の前で母親を殺されてるのだ。
その時の敵を取りたいと思うのは至極当然のこと。
あの時と同じ土地で、同じ敵に狙われて。
彼女の心中が穏やかなはずないではないか。
「……10年前、私はお母様を助けられなかった。
敵を倒すほどの力も頭もなかったんです。
けど、今は違う。
ようやく彼に復讐ができる。私とティンのすべてを奪った彼のすべてを奪える」
「……」