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ルコーラにとってメイがいるということは、衝撃だった。


確かに施設の前に置いて電話で返却したのに、まだ近くにいた。

多分返す直前に拉致したのだろう。

すべてはルイの仕業だったと知って、血は争えないと笑った。



リルを追ってきた日本で、ルイの行動の不自然さに気づいた。


国から連れてきた秘書にあとを付けさせれば、野崎とかいう女のマンションにメイがいるではないか。

驚いて、しかしほくそ笑んだ。


金で雇った男達にメイをできるかぎり“乱暴に拉致してくるよう”依頼した。


日本人は誠実で、思った通りに働いてくれた。


「……ええと…?」


ぱちくりと目を覚ましたメイを、まじまじと眺める。

成長したメイは、ますますエルナリーゼに似ていた。

もう少し淑女に教育すれば、さぞ立派エルナリーゼになるだろう。

ルイは甘やかしすぎなようだ、彼女は奔放に育ってしまっていた。


だから、やり直す。



「…初めまして、私はね、ルコーラ・ヒューアスというものだよ」

「初めましてです。えと、メイっていいます」

「いいや、君はメイじゃない」

「ふえ?」



「君は、今日からエルナリーゼだ」



一瞬、きょとんとした顔をして。


「一一わかりましたです。メイはエルナリーゼですねっ」


にっこりと、満面の笑みで頷いた。