「おかえりですか?」

高遠は男達に笑顔で話しかける。

「……ああ」

寡黙なのか、使用人に戸惑ってるのか。
全体的に話しかけられたのが嫌そうだった。

「ルコーラさまのお客様でいらっしゃいますよね。先程は慌ただしくお部屋に入られたので、ろくにお茶も出さずに申し訳ありませんでした」

「いや、結構です」

「おわびといってはなんですが、玄関までご案内しましょうか」

「それは助かる。ここの使用人はとても優秀なのですね」

黒ずくめのスーツ、サングラス。

揃って似たような格好をしていた。


(……日本人か)


日本語のイントネーションや風貌からそう取れる。

来日数日目のルコーラが、日本人の客を連れてくるだろうか。


疑問に思いつつ、ありがとうございますと礼を言った。

「皆様ルコーラさまのお仕事のお客様ですか?」

案内しながらそう問えば、ひとりが頷いた。

「やはりそうでしたか。ああそうだ、皆様あの部屋に6人もいれば手狭だったでしょう?もっと広いお部屋を用意すべきでしたね」

「いえ、中にはほとんどものがありませんでしたし、そんなに…」

「話し合いには丁度いい広さでしたよ、気にやまないで下さい」

「そう言っていただけて助かります」



一一引っかかった。


なんだ、この人たち厳ついのは見た目だけか。

以外に単純で、わかりやすい。

「でも次いらした時にはもう少し大きめのお部屋を用意致しますね」

「…ありがとうございます」

玄関に案内して、靴を並べる。

「……?」

違和感に気づいた。


一見普通の革靴なのだが、異常に重い。
まるで鉄板でも入っているかのようだ。

人数分丁寧に並べて、頭を下げつつ送る。


「………よし…間違いない、メイさまはあの部屋だ」


いとも容易く引っかかった。

先程高遠は“6人”と言った。

それになんら反応することなく、当たり前に会話を勧めた。

彼らは4人。

ルコーラを合わせても、5人のはずだ。

では残りの1人は?

アタッシュケースの鍵屋はさっき帰ったし、でも部屋に入ったのはあの四人とルコーラと、バッグのみ。


ではあのバッグに誰か入っていたと考えるのが普通だ。


もともと案内した部屋は無人なのだから。


高遠は思ったよりも身近にメイがいることに安心した。

遠いところだったらさすがにどうしようもない。

この屋敷を辞めるのは、ルイにメイを返してからだ。

そう決意して、ひとまずメイの居所がわかったことに安堵した高遠は、ルイの帰りを待った。