生徒は叫んで逃げて、部屋の端に丸まる。


まだあの変な声は続いていて、途端にビビる。


打ち所が悪かったのか。


だとしたら、責任は自分で――



「し、知らないっ!私、知らないっ」



今度は彼女が部屋から逃げる。


怖かった。


生徒はいいところのご令嬢だし、損害賠償とか名誉毀損とかで訴えられたら、まず家庭教師は首になって、借金だらけになるから両親には見放されて、大学院、予備校、それどころじゃなくなって、人生、人生が――


「ちがうっあれはあいつが勝手に!」


本当に死ぬかもしれない。

怖い。

何が?


私の人生狂うのが。


「私が何したって言うのっ…」


なんで私ばっかり。

生徒をちょっといじめたらあんなに弱いなんて。

てゆーか弱い奴が悪いよ、そうだよ。




私はなんにも悪くない――