「父、ルコーラ・ヒューアスには、愛した女がいました。
ご存知でしょうか、リル様の母上のシャリル王女のお付の、エルナリーゼです」


「はい。小さい頃彼女には私もお世話になりました。あなたのお母様でしょう」

「そうです。覚えていただいてて、恐縮です」

「幼いながら、エルの子供であるあなたとエルを引き離して日本に来たことを痛く思ってましたもの」


すべてはルコーラの暗殺の目論見から逃れるためだったのだが。


「あの事件のあと、母は自殺しました。
それを父はとても哀しみ、悼みます。
そんな中仕事に没頭するようになった父は、たまたま訪れた日本である人物と出会いました」


彼は嫌そうな顔をして。




「……母であるエルナリーゼに瓜二つの少女、国崎メイという女の子です」




「……あ……!」

ティンが何かをつぶやいたがリルが足を蹴って制してた。

なんだろうと疑問に思ったが、ルイは続けた。


「孤児院にいた彼女を引き取って、彼は常に手元に置いて溺愛しました」


「……」

口元に手を置いて、リルは話を聞いていた。

少し顔色が変わっていた。


「彼女は…メイは、当時18、9だった僕にとって衝撃でした。
父の言う事をすべて聞いて、操り人形のような彼女でしたが、たまに見せる個性がとても愛らしかった。
どうしようもなく、欲しました」

「……なるほど」

「生まれて初めてだったんです。あんなに人を欲したのは」


父の傍らにいつもいて、自分のものにはなれない彼女。



欲しかった、どうしようもなく。