きっと、メイは目をつけられたのだ。
目をつけられて、ものにされたのだ。
「……このことをルイ様は」
知らないわけないだろう。
「……」
隠さなければ、と思った。
彼女は、急いでこけしでそれを覆い、見えないようにした。
誰にもバレてはならない。
そして秘密裏に、逃げるのだ。
そう弟から言われたばかりじゃないか。
弟は、この屋敷の秘密を知って逃げるようにと言ってきた。
絶対にいいことにならないからと。
だから退職届を出したのだ。
当然じゃないか、怖いもの。
カサンデュールという国も、ルコーラも。
だから何も知らなかった振りをして、逃げるのだ。
そう、さっさと一一
(薄汚れてて、引き裂かれて……)
このワンピース、きっとメイは酷いことをされたのだろう。
なぜ彼がこれをここに置いてるのかはわからないが、ここに置いたということはルイと一緒にいないということ。
今、高遠が切望してるあの2人は存在してないのだ。
「……っ」
高遠は、逃げることが出来なかった。
メイのあの今にも滅びそうな感じを支えるルイ。
あの2人の光景が壊れて、黙って見過ごせるはずがない。
「……」
彼女は急いで部屋をあとにした。