さて、その渦中の中にいる高遠は、急いで大旦那一一ルコーラの部屋へ向かった。
もちろん、綺麗に洗って干して取り込んだばかりの真っ白なシーツを手に。
1回の、最奥の姫の部屋とは逆の奥にある部屋だ。
重々しいチョコレート色の扉を開く。
「……」
いつも彼女は思っていた。
この人は、ものが多すぎないかと。
たった1週間程の滞在で、最初とは比べ物にならないほど物を増やしていた。
多分観光気分なのだろう、無駄に大きいこけしや、よくわからない女物の黒いワンピースもある。
外人の貴族のやることはよくわからない、とシーツを広げた。
と。
「……え?」
彼女は、目を見開いた。
見覚えのあるものがそのガラクタに紛れていたからだ。
白のワンピース。
フリルが多めで、ふわふわしていて、真ん中に青いリボンが付いている。
それが、ぐちゃぐちゃになって薄汚れて置いてあった。
切り裂いたような後もあり、見るも無残という表現がぴったりだった。
「一一う、そ。だってこれ…………」
忘れもしない、あの日、最奥の姫が身につけてたものだ。
精神剤を渡した時に、白いワンピースが似合うと思ったんだ。
「一一なんで…」
そして高遠はポケットに入っている手紙を慌てて取り出し、読んで確認した。
否、確信した。
『ルコーラは欲しいものは何が何でも手に入れる性格。気をつけるように』
弟からの手紙にそう書いてあって、彼女は必死に思案した。