今最も最善なことをしている。

今は泣くことでも喚くことでも責任を取ることでもなく、メイを助けることだ。


そのために野崎ができること、それは。




「…社長、ルコーラさまの王女暗殺の証拠をつかんで、公にしましょう」




レールを引くことだった。


「そうか、野崎、礼を言おう」

さすが、それだけで十を理解した。

手間が省ける、と野崎は不覚にも笑んだ。


「いえ。それでは、まずその十年前の事件についての調査を」


段取りを頭の中で作ってると、手のひらで制された。

「ああ、それはいい」

「……え?」


「今ここには、協力な証言者がいるじゃないか」


目を見開いて、野崎はため息を漏らした。
そうだった。

「リルさま……」


彼女は、最大の渦中の人物だ。


彼女に話を聞くのが一番手っ取り早い。


「……では社長、参りましょうか」


「ああ」

立ち上がった彼は、ふらりとよろめいた。


急いでそれを支えてちらりと顔を見る。

(……真っ青だ)

病気のように真っ青だった。

無理をするなと言いたくなるが、多分聞かないだろう。


「大丈夫ですか?」

「問題ない。メイに触れれば治る」

「では早く助けないとですね」

「ああ」


そうして彼らはホテルへと向かった。