怒り狂うかと思ったし、野崎に怒らなくてもルコーラを憎むぐらいはすると思ってた。
しかしルイは、静かだった。
「……」
「社長、どうなさりました?」
「……考えているだけだ」
「え?」
「……父上を失脚させる方法を」
何を言ってるのか、わからなかった。
しばらく固まった野崎だったが。
「いや社長!今はメイさんのことを考えるべきですっ」
「メイを連れ戻すことは不可能なんだ」
「なんで…ソフトボールでも金属バットぐらいなら握れます!」
「野蛮な方法で取り返しても、無駄だ。法的にも、道徳的にも」
「……あ、そうか…」
野崎には思い当たるふしがあった。
先日聞いた、メイの出生とルコーラとの関係のことである。
「父上を潰してから取り戻そう、ということだ」
力強さから、1歩も譲らないようだ。
「わ、わかりました……でも、潰すとなるとどうやって」
「それを考えてるんじゃないか」
「ああ……はい……」
そう言われて、野崎は黙った。
なんだこの人、全く動じてないのか。
私は大事なメイが連れ去られて、本当に悔しくて、悲しくて…。
「野崎、なにかいい案はないか?」
「……あ……」
ちがう、動じてないわけがない。
助けを、求めてる。
それに野崎は驚いた。
ルイは完璧だ、と野崎は評価する。
何だって出来て、頭も働いて。
ひとりで黙ってやってしまう。
己はそれの処理をしたりレールを引くだけの立ち回りだと思っていた。
しかし、そのルイが、野崎の意見を求めてる。
(……社長…)
小刻みに震えてるのにも気づいた。
不安じゃないわけがない、怒ってないわけがない。
ただ、彼は冷静なだけだ。