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メイが監禁生活から解放され、野崎の家で悠々自適に過ごしてる頃。


監禁生活をメイのかわりに過ごしてる者がいた。

「……はい、そうです。何日かおやすみです。……まあ、そんなにさみしがらないでくださいな。今度はいきなり消えないできちんと連絡しましたでしょ?」

くすくす、と電話口の向こうの相手に笑む彼女をあまり面白くなさそうに見つめるティン。

暇を持て余してるらしく、ぶらぶらと机の上に座って足をばたつかせていた。

ホテルのスィートルームとあって、とても広い。

ワンフロアそのまま部屋になってるのだから、衝撃である。

が、広いからと言って暇にならない訳では無い。

探索もし終わって、やることもなく、ティンは仕方なく恋敵との電話に耳をすませるしかなかった。


「私だって会いたいですよ。場所?申し訳ありません、それは……。ありがとうございます、察してくれるところが、瑠璃の優しいところです。ふふっ、大好きですよ」

まるで恋人に連絡しているようだ。

実際はただの親友なのだが、ティンにしては面白くないことこの上ない。


「私のことを聞かれても、絶対に知らぬ存ぜぬを通してください。……嘘がつけないあなたのことです、きっとバレるでしょうからお友達にフォローを依頼してください。……あら、本当のことでしょう」

正直、自分と話してる時より輝いてる気がする。

どんどん機嫌が悪くなっていくのがわかった。

「それでは。大好きですよー……まあ、切られてしまいました。照れ屋さんです」

呆然と受話器を見つめるリルに、嫌味が言いたくなった。

「ほんっとうラブラブだよなぁー」

「でしょう?私の伴侶です」

「……あっそ」

嬉しそうに言う彼女に嫌味は通じなかった。

もともと、リルはその電話の相手と会いたくて日本に来たがってたのだ。

そりゃあラブラブなのも当然である。

でも気に食わない、とても気に入らない。

女ですら嫉妬してしまう心の狭いティンであった。

「だいたい今の電話で3回も大好きって言ってんだから、日常会話どうなってんんだよ」

“もしもし、瑠璃ですか?離れていても大好きですよ”から始まった会話であった。


「まあっ、数えてたんですか?」


「わ、悪かったよ……でもなぁ、いくら女同士といえど」

「あとであの子の彼氏に教えてやりたいので、愛してるの数も教えてくださいっ」

さすがのティンも、机からこけた。


「……4」

「ありがとうございます!早く学校に行って彼氏の前で高笑いをしてやりたいっ」

「……はぁ」

何勝った気でいるんだかと呆れた。