「……野崎さん……?」
「……はぁ…」
不安そうに見つめられ、ため息をついた。
メイが自分に求めてる感情が、恋愛感情だろうと関係ない。
この子を傷つけるような人間にはなりたくない。
「……好きですよ、もちろん」
「わあっ!本当ですか!?」
諸手をあげて喜ばれた。
「よかった……メイも野崎さんのこと、その、好きです」
「……」
すんごい嬉しそうな顔をされながら言われた。
これを毎日やられてるのなら、ルイが溺愛するのもうなずける。
「全く…」
野崎の発言は正解だったようだ。
正直、秘書検定よりも難題だった。
メイの求めてた感情は、きっと恋愛でない単純なものだろう。
二つに結んである頭を撫でてやれば、嬉しそうに擦り寄ってきた。
ふふ、と笑っていると、ガタンッとなにか大きなものが倒れる音がした。
廊下からリビングへと続くドアの前で、見慣れた金髪の男が倒れていた。
「あっ!ご主人さまー!」
「……し、社長…」
来てたのか。
そういえば、出勤前にメイと触れ合わないと一日が持たないとか訳の分からないことをぬかして、来るとか言っていた。
浮気のバレた男の気持ちを味わいながら、またため息をついた。
「野崎が……め、メイを……うぅ…」
「ご主人さまどうしたんです?クッキー食べます?」
「くそ……嫌な予感はしてたんだ…」
「お顔が見えないですよー?ご主人さまー?」
倒れたままのルイをつつくメイ。
「……全く…」
ノートパソコンの前から立ち上がって、自分の雇用主へと駆け寄った。
野崎の苦悩は続く。
そしてメイは、好きな人がまたひとり増えた。