「うぇえ!?な、なにを……」

好きだから、危ないところから遠ざけたくて……じゃないのかと、メイは落ち込んだ。

なんだ、ちがうのか。

「え、違うんですか……」
「何が正解なんですかこれ…」

野崎は知らない。

メイが考えてることは、驚くほど単純な根本的な思い。

人間がおおよその知り合いに抱く、例えば友達が友達を守りたいというような感情は言うなれば“好きだから”

恋愛感情云々ではない、単純な感情。

当たり前に平等に与えられるはずのそれを、実の母親や育ての母親、その他買われた人物にさえ、メイ本人に与えなかった。

それ以外の自分を愛してくれてる人物は、片手で数えられる程度にしかメイは知らない。

そしてそれらは皆、直球で“好き”と言ってくれた。
リルしかり、ティンしかり、“兄”しかり。

貰えれば安心する。
否、貰うことで実感する。

だから、メイも野崎に欲したまでだ。


「……それとも、ご主人さまがメイを頼むって言ったからそんな風に守るみたいなこと……?」

くわえて、今のメイはややこしい。

なぜなら変な自信がついてしまったからだ。

“あなたは、自分が愛されてることを信じてください”

そうお友達に言われたから、少し自信がついた。だから踏み込んで野崎に聞いた。


「……」

さて、野崎は迷った。

彼女の人生で、“好き”を求められたことは恋愛沙汰を除いてなかったからだ。

というか、それが普通である。

一般人たる彼女は、とても迷った。

当然だろう、メイの求める答えが、感情がわからないのだ。


野崎自身はメイが好きだ。


まるでほうっておけない少し間抜けな妹のように見ている。

とてもじゃないが、嫌いとは言えない。

だからといって、今うかつに好きだと言えぱ一一ややこしいことになるのは火を見るより明らかだった。

ルイがメイのことを溺愛してるのは知ってる。

もし仮に“ご主人さまー!今日野崎さんに好きって言ってもらえたですー!”とかメイが報告すれば、殺される。間違いない、埋められるか燃やされる。

しかし、嫌いと言って泣かせるのも忍びない。

どうしろというのだ、全く。