「でも…どうすれば」

『一応言ってきた子達には、親戚の人とかじゃない?とかなんとか、誤魔化してはみたわ。
親戚の人とか、弟とか、"彼"と話を合わせてまたその噂を広めるのね。
それで、彼とスーパーデートはしばらくやめときなさい。』

だいぶ細かくバレてるみたいだ。でも根本的なところをきっと勘違いしてる。

「あの、ですね。
彼とは付き合ってるわけじゃないんです。
夕飯の買い物を一緒にしているだけで…」

合コンというのは言ってないが、彼との出会いから今までの経緯を大雑把に説明した。

『あら、なにそれ!
それストーカーみたいなもの?
そういう人はどんどんつけあがってくるわよ!
早め早めに切っときなさいよ〜
今回みたいな、変な噂も流れちゃうしね
なんだったら私が言ってあげましょうか?あなた優しいから強く言えなさそうだしね〜
あんたなんか嫌いっ気持ち悪いから私に近寄るなーって』

うふふ、とお酒で顔を赤くしてお茶目に笑う。

「あ、で、でもですよ?彼もそんなに悪い人ではないんですよ…?
彼、私が料理作れる人いいって話したらもう、ほんとに、料理練習したみたいで、しばらくしてばっちりです、なんて言って、あ、だからそれからお弁当じゃなくて材料一緒に買うようになったり…」

あらあら、と言って中山先生は目を丸くしながら

『両想いになっちゃったの』

と言った。
正直言うと、それから何を話したか覚えていない。両想いっていう言葉の破壊力が大き過ぎて、そんなことないですって言ってお酒を飲み始めて…
そんなにお酒で得意でもないのに飲んで飲んで…気が付いたら自分の部屋の自分の布団で寝てる。

今日は確か学校は休み…だから学校の心配はしなくていいけど…

「はあ…」

昨日あんなに飲んだのは恥ずかしかったのと、それから先の言葉を聞きたくなかった、現実を見たくなかったから。
逃げてばっかりだな…私…

水をグラスに注ぎ一気に飲み干した。
体に水が染み渡る。数日前の校長との話を思い出した。