放課後になり、中山先生とよく行っていた飲み屋さんに入る。


『はあー…今日も一日お疲れさま〜
疲れましたね〜!
それに2人で飲みに来るのひっさびさですね!』

職員室での暗い空気とはうってかわっていつもの明るい中山先生だった。
心配は杞憂だったみたい。ならわざわざ航と約束のある今日じゃなくて別の日にしてもらってもよかったかな…?
ちょっと失敗

ビールとおつまみを頼んで一息ついた時、

『今日急にごめんね。大丈夫?
約束とかなかった?』

「大丈夫ですよー。
変えられる用事だったので。」

そう、よかったあと言って中山先生は来たビールを早速飲み出した。

『ゆうちゃん、はじめ危なっかしい感じだったけど、最初の子達が卒業してからはだいぶ落ち着いて良かったわあ』

ふふっと笑って、

「何回言うんですかそれ〜」

と言い、自分もビールを飲む。
それを横目で見ながら、中山先生は顔をしかめる。

「な、なんですか?」

はあっとため息をつく中山先生。

『今日の予定、男の子と?』

ぎくっとした。背中に冷や汗が流れる。
正直に話すべき?話して大丈夫?彼にとっても私にとっても悪い方向にいかない?でも中山先生に嘘つくの?散々お世話になって、面倒みてくれたあの中山先生に?
一瞬の間にいろんな思考が頭を駆け巡る。
いや、そもそも男の子って、私と同年齢でも中山先生にしたら男の子だし、航のことを言ってるんじゃなくて漠然とした男の子のことかも…というか、やっぱり中山先生には嘘つけない。

「…そう、です。」

ビールの入ったコップを握りしめながら俯いてしまう。中山先生に何か言われるのが怖い。

そう、とだけ言うと中山先生は残ったコップのビールを飲み干した。お代わりを注文する。私の方を向く。俯いていても分かってしまう。

『あのね、あなたが無事誰かを好きになれたのは良かったわ。
でも、生徒相手はだめよ。
あなたは先生なんだから。
少なくとも、相手が”生徒"の間は我慢しなさい。
もう噂が私のところまで届いてるわよ。
去年きた校長先生はそういう、評判とか世間体とかうるさい人みたいなの。
校長に話が行く前になんとかするべきよ。』