「違いますよ、今日は違う友人です。」

彼はおおよそ普通の口調で、自然に答えた。彼が嘘をつく理由は見当たらない。

「そうなんだ。」

少し、安心した。でも、まだ分からない。あんなに仲の良かった司路くんが高校生なら航くんも高校生の方が自然だ。

「さっき…」

制服の司路くんたちと会ったけど、君は?高校生じゃないの?
そう聞こうと思ったのに、声が出なかった。それを聞いてしまったらもう、彼とは話してはいけなくなる気がしたから。

「…無性にチョコ食べたくなったんだよね〜」

結局、私の口から出たのは思っていたのとは違う言葉だった。そのあと少し話をした後、私は思いつきを口にしてみた。

「この前、連絡先、断っちゃったからさ、何かお菓子一個買うよ〜?」

この前はごめんね、どれがいい〜?と聞くと、彼は凄く真面目な顔をして、私の方を向いた。

「あの、できるなら、お菓子とかいらないので、今からでも連絡先教えて欲しいです。」

私は彼にひどいことをしたと思った。それに、まだ、答えられないと思った。

「よく3度目の正直って言うじゃない?
私あれ信じてて、一回目はきせき、二回目は偶然、三回目は必然だと思ってるんだよね。だから、」

私は指で3を表して彼の前に出す。

「3回目、次会ったら交換しよう」

「はい!ありがとうございます!」

私は彼を断ったのに、彼はすごく嬉しそうな顔をしてお礼を言って頭を下げた。
顔を上げるとすぐ、すいません、それじゃおれはそろそろ、と言って飲み物だけを掴んで会計に走って行った。

その後ろ姿を見て、悪いことしたな、と思いながら、もうしばらくお菓子売り場には近寄らないようにしようと決めた。