大森エリカさんって、うちのクラスの、いわば女帝。
あたしは、ひそかに彼女を『女帝エカテリーナ』とあだ名をつけて呼んでいる。
それくらい彼女は権力者なんだ。
エカテリーナ怒らしちゃ、マズイ! 裏で何をやり始めるか分かんない!
あたしのせいで、由依がターゲットになっちゃうよ!
大森さんは、あたしのことなんてもう眼中に無いみたい。
完全に由依に対して、敵愾心をむき出しにしてる。・・・うああ、ヤバイ!
「まだあたし、メイクしてる途中なんだけど」
「そんなの知らない。別な場所でやれば?」
「マスカラ片っぽだけ塗った状態で、学校を歩き回れって?」
「だから、そんなの知らない。ロッカーはメイクするための備品じゃないもん」
「・・・・・・・・・・・・」
「そこ、どいて。佳那にロッカー使わせて」
大森さんの目付きが、どんどん鋭くなっていく。
待って待って! エカテリー・・・いや、大森さん!
大森さんの本来のターゲットは、あたしでしょ!?
いいよいいよ、マスカラでも付けまつ毛でも、好きなだけこんもり盛っていいから!
だから由依をターゲットにするのはやめてよ!