古ぼけた写真をもう一度見た

………一枚しか、ないのか



先の“小さな幸せ”という言葉を思い出す

この父親にとっての幸せの瞬間だったのだろうか

部屋でたった一人で孤独死しても

この写真は捨てなかったんだと思うと




写真をとっといておくならば

なぜ、娘に会いに行かなかったのか

深い事情は知らないから分からないけれど

もしかしたら、この写真をみて

会えない娘を想像したり

大人になった姿を想像したりしていたのかと思うと



………言葉にならない



タケさんは、失敗できないし、しないし、させないと言った

さっきの赤ちゃんの写真もそうだけど

仕事に誇りを持ってるのがよく分かる



俺は今までに

そんなことを考えて仕事していたことがあっただろうか


ただ、目の前の書類を片付けていただけだ


どこかで

昇進しても仕方ないとか
どうせ給料は変わらないとか

思ってた




恥ずかしい