「男子の体育委員は…」
どうやらホントに体育委員に私はなったらしい。
ご丁寧なことに、黒板にきっちり名前を書かれた私はそれをジッと見たあと机に伏せた。
「…体育委員、なってやろうか?」
横から聞こえた声に顔を向けると吏紗は机に伏せた状態でこっちを見ていた。
まぁ、私からしたら知らない男子とするよりは吏紗や宮田くんとやった方が気が楽だけど…。
「他にやりたい委員会ないの?」
「べつに、ないよ」
「ふーん…じゃあ、よろしく」
そう言うと吏紗はふっと笑って状態を起こした。
「男子~ 体育委員誰かやんねぇか~?」
「俺やる」
「お!九条、オマエやるか!さすがだな!」
先生は吏紗の立候補に嬉しそうに黒板に名前を書いていた。
「…と、あと学級委員なんだが…女子と男子それぞれ1名ずつな。これが決まったら今日は下校だ」
先生は嬉しそうに言うけど私たちは嬉しくもなんともない。
だって、決まらないと帰れないから。
ぐるっと教室を見渡してみても立候補するような人はいな…
「…私、やる」
いた。
私の列の真ん中あたりの席に座る女子生徒が手を挙げていた。
「おぉ!高野やってくれるか!」
先生はこれまた上機嫌に、今度は鼻歌混じりに名前を書き出した。
へぇ…高野 有理(ゆうり)っていうんだ。声からだとなんかキツい性格してそうだな…。顔とかまともに見たことないけど。
「男子は?男子は立候補いねぇのか?」
「はいはい!俺!俺やる!俺!」
窓側の席から大きな聞き慣れた声にビックリして見ると、宮田くんがブンブン大きく手を振っていた。
「よし、よく言った宮田!」
さっきと同様、鼻歌混じりに名前を書き出した先生は「あ」と何かを思い出したように呟いた。
「文化祭実行委員も今日中に決めなきゃいけねんだわ、忘れてた。男子でも女子でもどっちでもいいから1人やってくれないか?」
先生がそう言った瞬間、帰り支度を終えたほとんどの生徒が固まった。
雰囲気で早く帰りたいと訴えているわりには立候補しない他の生徒たち。
「…あ、あの…私、やっても…良い…です」
この言いにくい空気でよく言ったな…と、思いながら横から聞こえた声に顔を向ける。
ちらほらカバンを持って席を立っている生徒や、めんどくさそうにしている生徒で教室は嫌な沈黙が流れていたのに、隣の女子生徒は小さく手を挙げて、小さな可愛らしい声でそう言った。
「…原田、オマエやるのか?」
先生の質問にコクコクと頷く原田さんに、先生は「ありがとう」と一言そう言うと黒板に原田 真子(まこ)と書いた。
「…よし、なんとか無事に今日中に決めなきゃいけない委員会は決まったので解散!あ、あと今日委員会が決まった5人はこの後ちょっと用があるから少しだけ残ってくれ」
先生がそう言うと、私たち5人以外の生徒達は次々と下校していった。