シャツでパタパタと扇いでいる吏紗を目で追いながら先生の話に耳を傾ける。
身長、伸びたな…声も低くなったし。保健室で普通に気づいたのはたぶん、髪型。
ふわふわの、パーマかかった感じの緩い髪型が変わってないから…。
「…ん?花奏、どうかした?」
見すぎていたのか、使紗は私に顔を向けて首をかしげていた。
「ううん、なんもない」
そう言って顔ごと反対を向くと、左隣の人と目が合った。
黒髪ボブの可愛い女の子。
雰囲気からして守ってあげたくなる女の子はニコッと笑った。
ゆめかわだなこの子。ピンクのカーディガンがここまで似合う子初めて見たもん。
一応、私も笑って返したけど、絶対ぎこちなかったと思う。
小さくため息をついて前を向く。
なんの話してんのか全く分からなくなった。確か、学級委員とか合宿とかいろいろ単語は聞こえてたから…1年の事だろう。
教育合宿とか1年の頃にあるらしいからね。私は参加してないけど。
てか、なんで2年になったのに1年の話を聞かされなきゃならんのだ。
「くろせー」
不意に名前を呼ばれて慌てて下げていた頭を上げると、先生とバッチリ目が合った。
「黒瀬、オマエ体育委員しろよ」
「……は?」
たっぷり30秒。私は固まった。
え、なに体育委員って。なにすんの。てか話聞いてなかったんだから分るわけないじゃん。今なんの話してんの。
「黒瀬、オマエ話聞いてたか?」
先生の爽やかな笑みに目を逸らす。
「よし、決定。黒瀬オマエ体育委員な」
先生がそう言うと、「ククッ…」と誰かの笑う声が聞こえた。
こんな状況で笑うやつなんか一人しかいないんだよ。
私の右隣の席に座る、私の幼馴染は小刻みに肩を震わせて笑っていた。