「なあ」


保健室を出るやいなや、茶髪の男子が吏紗に詰め寄った。


「この子、オマエの彼女?」


そう言って私の顔をのぞき込むようにする茶髪の男子に、私は驚いて一歩下がると…


ゴンッ


鈍い音が廊下に響いた。


「いったぁぁああ〜っ」


あまりの痛さに座り込む私に、茶髪の男子は慌てて謝罪してきた。


「わっ、ごめんね!ごめん!」


「うん、大丈夫だから…アハハ…」


その様子を吏紗は一人でクスクスと笑っていた。


心配くらいしろよ…コノヤロー…


「オマエ、笑ってないで彼女の心配しろよ!?」


そう言った茶髪の男子の言葉に吏紗はさらに笑い出した。


コイツ、頭イカレたかな?大丈夫かな?


「ククッ…奈緒(なお)、ソイツ俺の彼女じゃねーよ…ククッ…アハハハハ!」


そう言って声をあげて笑い出した吏紗を奈緒と呼ばれた男子は「は?」と言いながら私と吏紗を交互に見合う。


「え、吏紗の彼女じゃねーの?」


びっくりしたように聞かれ、コクコクと頷くと、「ほんと?嘘言ってない?」と何回も聞いてきた。


ホントに彼女じゃない。と3回くらい言ってやっと信じてくれた彼は、はいと言って私に手を差し伸べた。


「俺、宮田 奈緒よろしくな」


「…黒瀬 花奏です、よろしく」


自己紹介をお互いやって、私は宮田くんの手を握る。


ぶんぶんと勢い良く振るもんだから腕がもげるんじゃないかとほんとに思った。怖かった。そして痛かった。


「担任誰になるかな〜」


3人でたわいのない会話をしながら廊下を歩く。


「俺、小園(こぞの)は嫌だ〜」


「あ、私も嫌だ。あの人うるさい」


「でもヨッシーも嫌だ。アイツ終礼長いから」


「私は小園じゃなかったら誰でもいいかな〜」


話しながら教室に入った私は絶句した。