誰も居なくなった家…。
私はとりあえずコップやお菓子を片付けようと部屋に上がった。
「…有理と真子か…」
早に入ると、片付けやすいようにコップやお菓子が整理されていた。
お菓子の山の側には宮田くんの置き手紙があった。
『体調悪いんだって?無理させて悪かった。これ、俺たちからのお見舞いな!ちゃんと休めよ! 奈緒』
お見舞いって…お菓子持って帰るのが嫌だったんじゃねぇの?
そう胸中で呟きながら、コップとお菓子をキッチンに運んだ。
コップを洗いながらソファーを見つめる。
さっきの光景が、瞼の裏に蘇る。
あのとき、一瞬だけ真子の顔が過った。突き放そうと思えば突き放すことが出来た。でも私は、それをしなかった…。
「…なんだよ…これ…」
ここ最近、とくに真子と宮田くんはグイグイ私の中に土足で踏み込んで来た。
有理と吏紗はその様子を呆れ顔で見ていた。まぁ、吏紗の場合は面白がってたけど…。
お昼や放課後、真子の話は吏紗のことばかりで有理も呆れながらだけど、どことなく楽しそうに聞いていた。
真子に吏紗のことを教える度に、私の中の吏紗が一人ひとり消えていく…。
その度に真子は嬉しそうな顔をする。
最初は真子が嬉しそうな顔をするから良いことだと思ってた。べつに何とも思ってなかったはずなのに…。
真子に吏紗をとられると思うと、胸に穴があいた感覚になるんだ。
苦しくなる。やっと会えた、私が落ち着ける場所が、他の人に取られるなんて…。
あー…私、嫌な子だ…。
「…可笑しい」
クスクス笑いながらソファーに飛び込む。
真子が悪いわけじゃないのに。誰も悪くないのに、イライラする。
イライラして、おかしくなりそうだ…。