「はぁぁぁぁあああっ」


吏紗くん特製はちみつ入りホッとミルクを持ったまま、大きなため息を吐いた私を吏紗はびっくりした表情で見てきた。


「なによ…なんなのその顔」


ジトっと睨んで吏紗を見るも、吏紗は少し困ったように笑うだけだった。


あー…ダメだ。真子の顔がちらつく…。


吏紗は優しすぎるんだよ。めんどくさいとかダルいとか言う割に付き合ってくれたりする…。


引っ越して、連絡を取るようになって、いろいろ心配してくれる吏紗を好きだと思った。


でも、こっちに戻ってきて再会して、そーゆう気持ちじゃなかったのかもしれないとも思った。


安心するけど、それは昔となんら変わらないから…。


真子が吏紗を好きだと言ったとき、胸の奥の方がチクッとしたけど、小さい子が自分のおもちゃを誰かに取られた感覚に似ていたから、慣れれば大丈夫だと思っていた。


「…大丈夫か?」


そう言って隣に座ってくる吏紗は分かり易いくらい優しい。


だから、知られたくなかった。


べつに隠してたわけじゃないけど、まだ知られたくなかった。


たぶん、少なからず颯斗も気づいてる。


さっきも何気ない様子を装いながら一瞬だけ視線が和室で止まった。


「…なんで、俺らに言わなかった?」


「………………」


「俺らに、言えなかったのか?」


その言葉に首を縦に振る。


「そっか」


そう言って私の頭を撫でる。


「そろそろ上に行こう」


そう言って吏紗を見ると、吏紗は黙ったまま私を見ていた。


「…どうかした?」


持っていたカップを机に置かれ、ただじっと見てくる吏紗に少し恥ずかしくなって顔を背ける。


「…オマエ、」


「ん?なに?」


何かを言いかけた吏紗に顔を向けると、吏紗は溜息を吐いて私を抱きしめた。


「………え、」


うまく頭が回らない。この状況が理解できない。なにやってんの吏紗…。


頭の中がぐちゃぐちゃになっていく…。