颯斗は「へへっ」と笑いながら私の荷物を持ってくれた。
「身長何センチなの?」
「今は177くらいかな」
話しながら家まで歩く。
どうやら今日の勉強会を吏紗に聞いてついて来たらしい。
家の前では吏紗たち4人が待っていた。
「…おはよ」
「おはよう、花奏ちゃん」
「おう、おはよ~」
「おはよう」
真子、宮田、有理は可愛く、元気良く、爽やかに返してくれた。
「……」
「……」
吏紗と目が合い、しばらくジッと見てみるも逸らすことをしない吏紗に「なに」と喧嘩腰に言うとはぁとため息を吐かれた。
人の顔見てため息吐くとはなにごと!?
「…オマエどこ行ってた?」
「コンビニ」
「へぇ~…ギター持って?」
「……」
私の沈黙に、吏紗から「オマエの負けだ」という無言の圧力が私と吏紗の間を流れた。
「河原だよ河原。べつに約束ほったらかしたわけじゃないからいいでしょ」
ポケットから鍵を取り出しながら文句を言う。
「どうぞ…階段上がってすぐの手前が私の部屋だから」
みんなを家に上げて私はキッチンに行く。
「花奏ちゃん、なにか手伝おうか?」
カチャカチャとコップを出す私に真子と有理がひょこっと顔を出す。
「あー…じゃあそこにあるクッキーと冷蔵庫に入ってるジュース持って行っといて」
テーブルにあるクッキーを顎でさしながら人数分のコップを割らないように持ち、ゆっくりとテーブルに並べる。
有理がジュース、真子がクッキーを持って出て行くのを見て、リビングダイニングを通り過ぎ和室に入る。
「…ただいま、母さん」
分けておいたクッキーを供えて、母さんの写真がある仏壇の前に座る。
仏壇にある母さんの写真はいつ見ても優しく笑っていて…胸が苦しくなる。
「かなちゃーん」
キッチンの方から聞こえる颯斗の声で我に返り和室を出る。
「どうした?颯斗」
ダイニングテーブルのイスに座っていた颯斗に聞くと、颯斗はイスに座ったまま私に抱きついてきた。
「…?颯斗?」
「…った…」
「え?」
「会いたかった…」
そう言った颯斗の声は微かに震えていた。