「そう言や来週テストじゃね?」


宮田くんの一言にその場に居た有理と宮田くん以外の3人が固まった。


「忘れてたよ私…どうしよう…生物全然わかんない…」


真子が慌てて言うのに有理はよしよしと頭を撫でるだけだった。


「よし!じゃあテスト勉強みんなでしよーぜ!」


宮田くんの意見に真子は勢いよく飛びついた。


「良いねそれ!私、生物わかんないから教えてほしんだ」


有理はケータイのカレンダーを見ながら「今週の土曜日なら空いてる」と言った。乗り気だな高野さん…。


「吏紗と黒瀬は?」


「俺もその日はなにもねぇよ」


「私も」


そう言うと、宮田くんと真子は「決まり!」と言ってはしゃいでいた。


「場所はどこでやるの?」


有理の質問にみんな考え込む。


「俺ん家は土曜日はちょっと無理だな…」


宮田くんの家は無理らしい。


「私も…弟の友だちが来るから無理かも」


真子の家も無理らしい。


「私の家はその日、父さんのお客さんが来るから無理」


有理の家も無理。


「俺ん家はー…弟いるから来ない方がいい」


吏紗も無理。


みんなの視線が私に集まった。


「…べつに、いま誰もいないから問題ないよ」


そう言うと宮田くんと真子は「良かった〜」と言って安心していた。


有理もケータイに予定を打ち込んでいる。


「あ、オマエ誰もいないっておじさんとおばさんは?」


「あ、うん…いま出張に行ってて居ないから…母さんも…ついて行ってる…から」


そう言うと吏紗は「ふーん…」と言って自分のジュースを飲んだ。


みんなで割り勘して店を出る。


方向的に、有理と真子が一緒で私と吏紗が一緒。宮田くんはひとりだった。


「うわー…俺だけ1人とか寂しー…」


と言いながら帰って行った。


「じゃあ、またね花奏ちゃん、九条くん」


「うん、また明日」


「じゃあな」


それぞれ別れて家路につく。


「…土曜日、楽しみ?」


吏紗が私の顔を覗き込んで聞いてきた。


ほんとに背、伸びたな…。


「…少し」


そう答えると吏紗は嬉しそうに「そっか」と言って笑った。


私の中は、少しの楽しみと少しの罪悪感でいっぱいだった。