そう言った九条くんの横顔がカッコ良くて、『あ、良いな…』と思ったのが意識し始めたきっかけで、九条くんのこと『好きだな』って思ったのは教育合宿の最終日。


班のみんなで合宿所の周りの山をクイズに答えながらゴールを目指すというレクレーションをしている時だった。


ある問題をみんなで協力して説いている時、急にお腹が痛くなった私は少し離れた場所で座り込んでいた。


「…原田?大丈夫か?」


小さくうずくまっている私の頭上から声がして、顔を上げると九条くんの不思議そうな顔と目が合った。


「…あ、う、うん。大丈夫…ちょっとお腹痛いだけだから…」


「そう?歩けるならで良いけど、みんなのとこ行くか?」


「うん」


そう答えると、「はい」という声と一緒に九条くんの手が私に伸びた。


「ありがとう…」


小さくお礼を言って九条くんの手を借りて立ち上がる。


パンパンとジャージを叩いた時、手に嫌な感触があたり、慌てて座っていた場所を見るとほのかに赤くなっていた。


「……っ!?」


驚いてその場に座り込んだ私を九条くんは不思議そうに覗き込んだ時、「あ…」と声が聞こえた。


やばい…なんでこんな時に…っ


羞恥心やらなんやらで涙目になっている私に、九条くんは自分のジャージを私の腰に巻くように言った。


「…これ、巻いとけ」


「え、でも…」


「良いから、巻いとけ…チッ…野郎しか居ねぇじゃん」


九条くんはそう言うと立ち上がって他の班の子と先生になにかを言うとすぐこっちに戻って来た。


「いま先生とアイツらに原田が足捻挫して動けないって言ってきた。アイツらには先に進んでもらうように頼んだから。先生も保健医に電話してくれるらしいからちょっと出たとこまで一緒に行こう」


そう言って九条くんは私を抱き上げた。


「…えっ!?ちょ、九条くん!?良いよ、私ここに座っとくから!!!九条くんも先に行っていいよ!!!」


慌てる私をよそに、九条くんは聞き耳を持ってくれずスタスタと来た道を引き返していった。


後ろから他の班の人の声が聞こえるけど、今の私には何を言っているのか聞き取れないくらいキンチョーしてて…。


チラッと九条くんを見てみると、少し慌ててるような、急いでいるような表情をしててその顔にドキッとした。


保健医の先生と合流して、九条くんにお礼とジャージは弁償すると言うと「そんなの良いから」と笑って返された。