まさかこんな身近に、幼馴染みを好きな女の子がいるとは…というか。
「…吏紗のどこが好きなの」
アイツのどこをどう見て好きと言えるのか…私は不思議に思った。
「えっとね…1年生の頃の教育合宿でね…」
真子は少し照れくさそうに、それでいて少し楽しそうに話し出した。
真子side
それは1年前の教育合宿。
「原田、それちょーだい」
「あ、うん…はい」
「さんきゅ」
班のみんなで協力して夕飯を作っていた。
私の班は、私、九条くん、阿部くん、藤原さん、中山くん、右田さんの6人班でそこそこまとまりもある班だった。
その頃はまだ、九条くんを恋愛対象として見てなくて、班のみんなだけでも仲良くしたいと必死だった。
2人ひと組でペアになり役割を決めて作業を進める。
私は九条くんと野菜を切る係だった。
「合宿でカレー作るとかほんとありきたりな~」
「ふふ…そうだね。でも、楽しいよ?」
「そうだけどさ、俺カレーは甘いのしか食えねんだよな~」
「え、もしかして九条くんって辛いのダメなの?」
そう聞くと九条くんはうーんと考えて
「辛いのは普通に食えるけど、カレーだけはなぜか食えない」
そう言って笑った。
「なんで?」
「あー…なんていうか幼馴染みの影響?」
「幼馴染み?」
「そう。まぁ、けっこう前に引っ越したんだけど、ソイツが辛いのがダメで、俺ん家共働きだったからいつも夕飯とかソイツの家で食ってたんだけど、ソイツの家もまぁ、いろいろ事情があってな。夕飯とかソイツが作ることがしょっちゅうあって、簡単に作れるのがカレーだったから。いつも甘口食わされてて、それからずっとカレーだと甘口しか食ってないから、かな?」
「へぇ〜…その子料理上手いんだね」
「上手いか下手かでいうと多分下手だな」
そう言って笑う九条くんに私も釣られて笑った。
「…でも、ソイツが作るカレーは美味しかった」