そうして、あたしたちは別れた。亘は合鍵を机の上に置き、あたしはそれを頷いて受け取った。
最後に、彼を見送るためにアパートの外に出る。


「じゃあね」

「……大丈夫か?」


まだ心配そうに、彼は私を見下ろす。


「何かあったらいつでも言ってくれ。いつでも力になるから」


引きこもっていた期間、あたしは彼にどれほどの心配をかけたのだろう。
こんな最後の時にまで、あたしの行く先を案じてくれるほど。

あたしは幸せだ。
誰がなんと言おうと、あたしは幸せだったし今も不幸じゃない。


「大丈夫だよ。いつか彼氏ができたら会いに行くね?」

「実加」

「そうしたら安心できるでしょ」


少し涙目で亘は後ろを向いた。

亘は優しいから、あたしも心配だよ。
あたしのことなんか忘れて、簡単に自分の幸せを追ってくれたらいいのに。

お互い、幸せになったら会おうね。
あたしは生きる速度が遅いから、あなたを大分待たせるだろうけど、それでもいつかちゃんと会いに行くから。

ちゃんと自分の力で立ち上がれたよって、言いに行くからね。