第一、友達になって間もないわたしが人気者のナツくんの私物を借りるなんて、ものすごく恐れ多いよ!

ましてや好きな人の思い出の品だなんて……!

嬉しい反面でおどおどしながらナツくんを見れば、何がおかしいのか楽しそうに笑っていた。


「ははっ、思い出っていうのはちょっと大袈裟だよ。そりゃあ確かに、記念としては残したけどさ。別に減るものでもないし、平岡さんが着てもかまわないよ」

「本当に、借りちゃってもいいの……?」

「もちろんだよ。俺、そんなことで嘘つかないって!」


おずおずとナツくんの表情を窺いながら最終確認をすると、にっこりと笑ってくれた。

そこまで言ってくれるのなら、きっと本当に貸してもいいと思ってくれているのだろう。
ナツくんがそう思える存在になれているんだと実感すると、無性に嬉しくなる。

ナツくんがわたしに向けてくれた笑顔に安心して、わたしもやっと笑うことができた。


「ありがとう! じゃあ、お言葉に甘えて借りさせてもらうね」

「うん、今度持ってくるよ」


ナツくんの微笑みに、胸がきゅうっと切ない音を立てた。


ねぇ、ナツくん。
わたし、もっともっときみに近い存在になりたいって思うよ。

今はまだ、友達としてそばにいさせてくれるだけでもいい。
だけどいつか、ナツくんの心に近づきたい。

笑顔だけではなくて、色んな感情を見せることを許してくれるような……。
気持ちを隠して無理に笑ってくれる必要なんてなくて、つらいときでも寄り添っていられる存在になりたいんだ。