4番を背負う横峰くんに挑むなんて、無謀な勝負じゃないかな……。
そんなことを思うと、おせっかいだとわかりつつもちょっとだけ気がかりになる。
だけど、今日のバッティングの調子について横峰くんと話し合っている茉理ちゃんの横顔を見れば、本当にただのおせっかいだなぁって思えた。
……だって茉理ちゃん、すごく楽しそうに話していたから。
言葉とは裏腹に、勝負の結果なんてこれっぽっちも気にしていないような顔で。
おまけに茉理ちゃんの奥に見える横峰くんも、そっくりな表情で笑っている。
ふたりのちぐはぐだけど意思が疎通しているようなやりとりに、見ているわたしが楽しくなった。
幼なじみって、微笑ましくていいなぁ。
心が通じ合っているような関係が、なんだか羨ましくなるよ。
「あっ、ナツくんお疲れさまー」
すべての球を打ち終えて出てきたナツくんに声をかけると、ふわっとしたやわらかい笑みを向けられた。
ただ、それだけで。
わたしの胸は、温かいもので満たされていく。
「ナツくん、たくさん打ってたね! すごかったよ!」
「あー、うん。まあ、練習だとね。さっき唯斗も言ってたけど、試合だとダメになるんだよなぁ」
少し前の会話はナツくんにも聞こえていたらしく、ナツくんは気まずそうに笑った。
たくさんヒットを打っていたというのに全然嬉しそうではない表情は、見ていると悲しくなる。
ナツくんはすぐにいつものようににこやかな表情になったけど、逆にそれが余計にナツくんの本音を印象づけた。