おずおずと真似して左手を挙げてみると、ナツくんはにこりと笑ってそれに自分の手のひらを打ち合わせた。
お揃いの利き手でするハイタッチに胸が熱くなる。それだけで、喜びが倍増ししたみたいだ。
「平岡さん、いいバッティングだったよ! 初めて打ててよかったね」
「えへへ、ありがとー! ナツくんが教えてくれたおかげだよ。本当にありがとう!」
ナツくんへのお礼に力がこもる。
嬉しさと照れでテンションが上がったままのわたしの言葉を、ナツくんは自分のことのように喜んで聞いてくれていた。
……ほんと、最後に打ててよかった。
全然ボールに触れることもできなかったときはどうしようかと思ったけど、今はとても気分がいい。
たった1球打っただけ。
それでもものすごく嬉しくて、それからとても楽しいって思えた。
野球って、こんなにも楽しいものだったんだね。
見ているときとは違う興奮、思い通りにできない苦労。
そして最後に訪れる、大きな達成感。
そういう野球の面白さに、少し触れたような気がした。
……まあ、1球打てたぐらいでは、普段ナツくんたちがやっている野球のことは完全に理解しきれていないだろうけど。
「雫、打ててよかったね!」
「茉理ちゃん! ありがとー!」
わたしと交代してナツくんが打席に入ったタイミングで、先に打ち終えていた茉理ちゃんが声をかけてきた。
どうやら茉理ちゃんも、わたしが初めて打った瞬間を見ていたらしい。
一緒に喜んでもらえて嬉しくなった。