余裕がなくて相槌さえまともに打てていないけど、ナツくんの声はちゃんとわたしの心にまで届いてるよ。

だからこそ、優しくて力強いパワーがみなぎってくる。

そして1球でもいいから打って、それを証明したいって思うんだ。


バットを振り続けた結果、空振りの数はここまでで24回。
ちなみに1ゲームの球数は25球で、ちらりと機械を見ると残り1球と表示されていた。

次に飛んでくるのが最後か……。

せっかくだから、最後ぐらいはボールに触れたいなぁ。

おのずと、バットを握り直す手に強い気持ちが入る。

そしてピッチングマシーンに視線を向けると、真っ直ぐボールが飛んできた。

今まで聞いてきたナツくんのアドバイスを意識してバットを振る。

……すると。


「……っ!」


バットに、今まで感じなかった衝撃が走った。

最後までバットを振りきると、重くて鈍い感覚がすっと抜ける。

そのことを認識したときにはもう、ボールが前方の空中に飛んでいた。

わたしのもとから放たれたボールは、なめらかな弧を描いて落ちる。落下したのは、結構遠くの方だった。

それでも茉理ちゃんに比べたら、飛距離はそこまで伸びてはいない。

だけど、こみ上げてくる気持ちはとても大きかった。嬉しさと興奮がいっぺんにやってくる。


「やったー! 初めて打てたよ!!」


満面の笑顔で飛び上がるようにゲージの外に出ると、同じように笑ってくれているナツくんに出迎えられた。

わたしと顔を見合わせると、ナツくんは左手を顔の高さに挙げた。

……もしかして、ハイタッチかな?